こんにちは 今日はロコモ、サルコペニア、フレイルの違いについて説明します。
医療の現場で働く私たちでもその違いについて正しく理解している人は少ないです。
一般の方はその違いについて理解困難と思われます。
今日はその違いについて簡潔に分かりやすく説明したいと思います。
ロコモ
ロコモとは「ロコモティブシンドローム」の通称です。
ロコモとは運動器の障害により移動機能の低下をきたし、進行すると介護が必要になるリスクが高くなる状態のことです。
運動器とは骨、関節、筋肉、神経を含めたものであり、体を動かすために必要な器官のことです。運動器に障害が起きると関節の痛みや制限が生じ、筋力が低下し、バランス能力が低下します。その結果、歩行能力が低下し、日常生活に制限をきたします。
サルコペニア
サルコペニアとは、加齢に伴い骨格筋の委縮、筋力の低下、身体機能が低下した状態をいいます。
サルコペニアでは要介護状態、転倒・骨折、死のリスクが高まります。
フレイル
フレイルとは老化に伴い、身体能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態のことです。
つまり健常な状態と要介護の状態の中間的な状態で、日ごろの生活習慣によって要介護に移行することもあり、逆に健常な状態に戻ることも可能な状態といえます。
フレイルには身体的フレイルと精神心理的フレイルと社会的フレイルがあり、中でも身体的フレイルはサルコペニアやロコモの影響を大きく受けることが知られています。
ロコモ、サルコペニア、フレイルの違い
同じような意味に思える「フレイル」「ロコモ」「サルコペニア」ですが、それぞれに違いがあります。
あえて違いを強調する意味はありませんが、用語を使うときに違いを理解していた方が使い分けできると思いますので簡単に説明します。
フレイルはロコモ、サルコペニアとは違って身体機能だけではありません。
フレイルには身体機能低下、他にも精神機能低下や社会性低下が含まれます。
高齢化に伴い様々な影響を受けることで活動量が低下し衰弱状態に陥ってしまうというのがフレイルの特徴です。
ロコモとは運動器(骨・関節・筋肉・神経)の障害により移動機能の低下した状態とあり、高齢化によって運動器自体の疾患による移動機能の低下もロコモティブシンドロームには含まれます。
サルコペニアは、加齢による骨格筋の委縮、筋力の低下など、筋肉が原因で要介護状態、転倒・骨折、死のリスクが高まった状態を含みます。
出典:日本老年医学会(https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/)
図がとても分かりやすいです。
サルコペニア(筋肉が要因) < ロコモ(骨・関節・筋肉・神経が要因)
ロコモ < 身体的フレイル
フレイル = 身体的フレイル + 精神的フレイル + 社会的フレイル
用語の使い分け
精神的・社会的な要因により要介護状態、転倒・骨折、死のリスクが高まった状態のときは、「フレイル」と呼びましょう。
運動器(骨・関節・筋肉・神経)の中で筋肉の低下が要因となり要介護状態、転倒・骨折、死のリスクが高まった状態のときは、「サルコペニア」と呼びましょう。
運動器(骨・関節・筋肉・神経)の一つ、あるいは複数が要因となり要介護状態、転倒・骨折、死のリスクが高まった状態のときは「ロコモ」と呼びましょう。
空気を読むなら
整形外科領域で要介護状態、転倒・骨折、死のリスクが高まった状態のときは「ロコモ」と呼ぶ方が良いでしょう。
外科、栄養領域で要介護状態、転倒・骨折、死のリスクが高まった状態のときは「サルコペニア」と呼ぶ方が良いでしょう。
行政で要介護状態、転倒・骨折、死のリスクが高まった状態のときを表現するときは「フレイル」と呼ぶ方が良いでしょう。
※それぞれの用語を広めている学会が違うため空気を読んだ方が良いと思います。整形外科領域の発表でサルコペニアと呼んだら適切ではありません。
一方、外科学会の発表でロコモと呼んだら適切ではありません。
少しでも、用語の理解を深めることができれば嬉しいです。