習近平主席の「共同富裕」の3つポイント|経済発展と金融安定

万里の頂上お金

習近平主席の掲げる「共同富裕」により、中国の株式市場が混乱している。中国は米国と首位の席を争う経済大国であるが、習近平主席は中国株式市場をどうしたいのか?今後も中国の株式市場の動向は習近平氏にかかっているので、「共同富裕」の意味を分析する。

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共同富裕の3つのポイント

習近平氏の主張は「社会と⾦融の安定・維持」が目標か?

中国

2021年8⽉17⽇に開催された中国財経委員会で、習近平氏が「共同富裕」を主張したことで混乱が起こりました。
「共同富裕」という言葉だけ聴くと、共産主義の色を全面に出した政策というイメージを持ち株式市場を否定する考えかと懸念されるが、毛沢東氏の政策とは違うようだ。
また、⾦融を安定させること、中国の金融リスクを防止することも主眼である。

2020年10⽉開催の五中全会の中で、「共同富裕」は、ややゆとりのある社会実現後の次の社会発展の目標として掲げられました。
中国は、世界第2位の経済大国に発展したが同時に富の集中、国民所得格差が広がりました。

コロナにより、2020年以降はその傾向は⼀段と強まっています。
そのため、共産主義を掲げる中国においては 貧富の格差を縮⼩することが急務で、社会の安定を維持するためには不可⽋で、対応しなくてはいけない問題となっているのです。

「共同富裕」の⾻⼦は、先進国の福祉政策に近い基礎制度の充実

金融システム

8⽉17⽇の会議以降、中国内外を問わず「共同富裕」に関する懸念が広がっているが、「共同富裕」の⾻⼦ 「共同富裕」は先進国の福祉政策に近い社会保障制度の充実のための税制制度であり、持続継続的に経済が発展するために必要な政策であるという認識で安心感がも出ている。

①「共同富裕」の前提は、質の⾼い経済発展を継続すること
8⽉26⽇、財経委員会の韓副主任が記者会⾒で「共同富裕」は「ケーキを⼤きくする」ことを⽬指しており、質の⾼い経済発展を前提としていると説明した。
6⽉に 「共同富裕」の試験区として指定された浙江省の政府計画においては、2025年までの「共同富裕」政策として、1⼈当たりの平均可処分所得を2020年の52,397⼈⺠元から75,000⼈⺠元に引き上げる⽬標が設定されている。
「貧困は社会主義ではない(貧困の存在は社会主義が実現していないという意)」とのスローガンにみられるように、指導部が経済発展を軽視することはなく、むしろ持続的な経済発展のために「共同富裕」⽅針を打ち出したと考えられます。

②豊かになる機会を与えることが、今回の「共同富裕」政策の特徴
「共同富裕」を達成する⽅法に関して、習近平氏は「⼀律的な所得分配ではない」とも強調しまし た。
今回の「共同富裕」は勤勉さで豊かになれる機会を平等に与える考え⽅に基づいており、単に富裕層 を⽬の敵にした⽑沢東時代の共同富裕策と根本的に異なります。
具体的には、平等にハイクオリティの教育の機会が与えられる教育システムや社会福祉制度の充実 を志向しており、⽣れで⼈⽣が決まる社会ではなく、個⼈の勤勉さで豊かにな れる社会の構築を⽬指しています。

③所得再分配の政策の多くは、先進国の福祉政策に近いもの
「共同富裕」を実現するための重要な⼿段は、所得再分配の基礎制度の充実です。
中国の主要な移転所得の⼿段は累進的な所得税に限られており、移転所得の⽐率は主要先進国を遥かに下回ります。
現在、第⼆次分配の制度として議論されているのは、⽇本の固定資産税に相当する「不動産税」や「相 続税」で 、いずれも⽇本では約70年前に導⼊された制度です。
ただし、既得権益層の抵抗もあるため、中国全⼟での導⼊は3~5年程度かけて緩やかに⾏われるとみられています。
なお、第三次分配として取り上げられた「寄付」が強制的なものではないかと誤解を招きましたが、韓副主任は寄付について明確に「⾃主的」と強調しました。
また、寄付に対する税優遇を含む「慈善法」を創設し、寄付のインセンティブを向上させることも表明しました。
すなわち、⼀部先進国の寄付税制に近 いものが導⼊されると考えられ、⽑沢東時代の極左政策とは⼀線を画すものと⾔えます。

「重⼤⾦融リスクの防⽌」⽅針を受け、株式市場に安⼼感

習近平氏の政策のもう1つのポイントは「重⼤⾦融リスクの防⽌」です。
共産主義国家の中国の言動による懸念は、その言動により株価暴落や金融不安を引き起こしていたが、金融システミックリスクを改善することを目指している。
当⾯いくつかの分野で規制強化が続くと予想されているが、それにより金融リスクが発生しないようにするものである。
規制強化は、指導部が⾦融市場の動向にも配慮しながら推進していくスタンスを表明したと解釈され安心感が広まっている。

指導部が交代する2022年秋の共産党⼤会を控え、習主席が⼤衆受けに良い政策を強めているという見方もあるが、経済大国を維持するためには⼀定の経済成⻑や⾦融市場の安定は必須であり、「共同富裕」の政策が先進国が既に取り入れているものであると認識されると安心感から中国株式市場の株価は回復に向かうと予想されている。

文献:大和アセットマネジメント「共同富裕など習近平主席の講話を読み解く」