がんの9割は正しい知識があれば予防できる

がん医療

東洋経済ONLINEに「がんの9割は正しい知識があれば予防できる」という記事があった。原著(秋津 壽男先生/秋津医院 院長)4800字を3分で読めるように要約した。

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がんの9割は予防できる

国立がん研究センターの予防研究グループが発表した「ガン発生とガン死の要因のうち、予防可能であったものの割合」によると、日本で発生したガンのうち、男性では半分以上、女性でも約3分の1が予防可能だったとされている。

また、日本のガン検診受診率は、OECD(経済協力開発機構)に加盟している先進国の中で最低レベルで30〜40%である。

これら2つのデータを考えれば、「おおよそ6~7割のガンは予防の余地がある」といえ、さらに正しい情報に基づいた予防に取り組めば、「ガンの9割は予防できる」といっても過言ではない。

 

なぜ、タバコを吸うとガンの発症が高まるのか?

がんは、「遺伝子修復のエラー」によって生まれるとされている。

どの部位にせよ、炎症やウイルス感染など、負担がかかって細胞が破壊されると、体はその細胞を修復する。そのときに細胞の遺伝子が誤って修復されると、ガン細胞が生まれると考えられているのだ。

これはつまり、炎症や感染が起これば起こるほど、修復回数が増え、その部位にガン細胞が生まれるリスクが高まるということ。

たとえば、喫煙が肺ガンや喉頭ガンを引き起こすのは有名だが、これは吸う度に、喉や肺に負担がかかるからである。煙の負担がもっとも大きい喉のガンリスクが極端に上がることからもそれは明らかである。喫煙者の肺ガンリスクが非喫煙者の約4倍であることに対して、喉頭ガンは約30倍にものぼる。

 

「父が大腸ガン、祖父が肺ガン」 遺伝するのはどっち?

「体質」の面で勘違いされやすいのは、「遺伝」に関する知識である。

よく、「父も祖父も肺ガン、兄弟は胃ガンでなくなっている。うちは『ガン家系』だ」といった話を聞くが、この認識は誤りである。

遺伝に起因するのは、一部の特定のガンだけである。

特に遺伝リスクの高いものは、「大腸ガン」「乳ガン」「前立腺ガン」の3つ。

これらのガンは「遺伝性・家族性腫瘍」と呼ばれ、遺伝が関与する可能性が高い。

親類がこの3つのガンで亡くなっていることが多いときは要注意だ。

とくにそのガンの検診に力をいれ、早期発見・治療を図ることを勧める。

一方で、遺伝要素は少ない「胃ガン」や「肺ガン」ばかりで亡くなる家系も多い。

しかしこれは、「遺伝」ではなく「家風」が原因と考えられる。

つまり、その家での習慣が起因しているということだ。

 

胃ガンリスクを高める「塩」に要注意

「食」についてよくいわれるのは、「焦げたものを食べるとガンになる」ということだが、普段の生活で口にするレベルの焦げは、特に気にする必要はない。

それより気にしてほしいのは「塩」である。

実は、ガンで圧倒的に問題となる調味料は「塩」だ

国立がん研究センターの調査においても、食塩摂取量の高いグループに属する男性は、最も低いグループに比べると胃がんリスクが約2倍高くなっている。

なぜ「塩」と「胃がん」はこれだけ深い関係にあるのかといえば、塩の刺激の強さにある。

海水浴に行ったときに、海水が目に入って痛い思いをした経験がある人も多いだろうが、あれだけ痛みが出るのは、塩が激しく細胞を傷つけるからである。

このような高刺激のものを、毎日胃の中に入れることを想像してみれば、胃壁を荒らして、ついにはガンになることも頷けるだろう。

特に日本人は、世界的にみても食塩摂取量が高いので、減塩を心がけるべきである。

 

「スポーツをしているから健康」は誤り

「スポーツをして健康的な生活を送っているから、ほかの人よりガンや病気になる可能性は低いはず」。

そう考える人も多いはず。

しかしそれは、イメージ先行の誤った思い込みだ。激しい運動を習慣的に行っている人は、ガンにもなりやすいといえる。

実は、ランニングやテニスなどの激しいスポーツは、NK(ナチュラルキラー)細胞の活性を低下させる恐れがある。

NK細胞とは、免疫細胞の一種で、体内をパトロールしながら、ガン細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃してくれる存在、いわばボディーガードだ。

しかし、NK細胞は、激しい運動によって活性が低下することがわかっている。

たとえば、2時間半のランニング後にNK細胞の活性が50~60%低下したという報告もある。

「健康のために」と体を動かすのであれば、ウォーキングがいいだろう。

ウォーキングのような適度の運動はNK細胞を高める効果があるので、ガン予防にはもってこいだ。

そのほかにも、「禁煙」「適度な飲酒」「質のよい睡眠」「笑うこと」「ストレスをためない」「体温を下げない」などがNK細胞の活性を高めるとされている。

 

人間ドックは受診するべき?

最後に「医療」と「検診」について、触れておこう。

「検診」について気になるのは「自治体や企業の検診だけでよいのか?」「人間ドックなどでいろいろな種類のガンを検診したほうがよいのか?」といった疑問だろう。

自治体や企業の検診を「対策型検診」、人間ドックを「任意型検診」と呼ぶが、私は、基本的に対策型検診だけで十分だと考える。

理由のひとつとしては、死亡例の大半を占める種類のガンは、対策型検診でカバーされていることだ。

対策型検診の目的は受診する集団の死亡率減少のため、死亡数の多い種類のガンが選択されている。

そのため、ある程度の予防はこれでカバーできる。

一方で、すい臓ガン、肝臓ガンなど、死亡数がある程度多いのに選ばれていないものには理由がある。

実はこれらは、正確に判断できる検査法が確立されていない、早期発見をしても生存期間の延長が難しい、といった理由で導入されていないのだ。

つまり、人間ドックなどの任意型検診でしか受けられない種類のガンは、その検診の意義がはっきりと認められていないともいえよう。

反対にいえば、対策型検診で対応している種類のガンは、しっかりとその検診の意義が確立されていて、早期発見・治療で治るということ。

 

 

ガンで死ぬのは不幸せか?

「最期はガンで死にたいね」と医者仲間で話したことがある。

ガンでいいことは、死ぬまで意識がハッキリしていて、自分を失うことがないことだ。

私個人の意見では、認知症が進行して家族や自分さえ誰かわからなくなって死ぬよりも、別れを告げる余裕さえない突然死よりも、ガンと宣告されて死ぬほうが、よい最期を迎えられると考えている。

ほとんど誰しもが、何かの病気で亡くなるわけなので、「ガン」になった場合も悲観せず、それをどう捉えるかが大切である。